特集記事

東大オープンキャンパス記念 サイエンスイベント@東大生協第二購買部

 2024年8月6日〜7日、2日間の東大オープンキャンパスにあわせて、東大本郷キャンパスの生協第二購買部(安田講堂のとなり)にて、社会連携講座「統合分子構造解析講座」の産学連携の研究活動を紹介するサイエンスイベントを開催しました。イベントレポートを掲載します〜

 イベントにご参加いただいた皆様、また、場所をお貸しいただいた生協第二購買部の皆様、ありがとうございました!

 本イベントでは、統合分子構造解析講座と共同研究をしていただいている企業の社員の方たちにも参加いただきました。本気で取り組んでいる産学連携の空気感を感じてもらいながら、最先端の分子の科学を楽しく学んでもらいたいという想いをカタチにしました。

 クロマトグラフ業界の総合技術企業であるジーエルサイエンスから3名の社員の方たちに参加いただき、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーに関連する製品を用いた体験型学習を用意してもらいました。

左から佐藤宗太 特任教授、ジーエルサイエンス カスタマーサポートセンター 安藤 晶さん・ケミカル開発2課 村山 希さんと本川正規さん、東大修士2年 薬師寺 諒さん(手前)

香りの成分は分子でできている

 統合分子構造解析講座では、高機能・高性能な、新しい香り成分分子の構造解析に取り組んできています。香り成分分子が鼻に届く、ということは、分子量が小さくて揮発性が高い、ということです。このような分子たちを分離するには、ガスクロマトグラフィーという装置が役に立ちます。分離した分子を検出するためには、質量分析計や水素炎イオン化検出器(FID)といった装置がありますが、面白いことに、人間の鼻を使うこともできます。高価な検出器に劣らず、鼻は感度がよくて「どんな香りがする分子なのか」という情報まで得られる高感度・多機能な検出器なんです。

 本イベントでは、ガスクロマトグラフィーに対して、匂いを嗅ぐための装置を連結したシステムの実物を、東大生協第二購買部に持ち込んでもらいました!かなり大きくて重量感ある装置でした。参加者の皆様には、装置に触れてもらいながら、どういうふうに香り成分分子の解析実験を行うのか、体験してもらいました。とても甘くて良い香り。何の香り?どういう構造の分子の香り?何に含まれている香り?ご参加の皆様には、とても楽しんで盛り上がってもらえました。

匂い嗅ぎのためのポートに鼻をあてると、甘い香りが!
結晶すぽんじさんがデカデカと印刷されたイベント用白衣。好評でした!

 混合物の分離には、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーがとてもパワフルですが、それでも限界があるので、特定の化合物をあらかじめ分離・濃縮する前処理と呼ばれる工程が必要です。ジーエルサイエンスが得意とする固相抽出(Solid Phase Extraction: SPE)は、簡単に・安く使える有用な手法です。本イベントでは、紫色の液体をSPEで分離すると、実はピンク色と空色の2成分に分けられることを実演しました。ピンク色分子をSPEに吸着させて空色分子を試験管に流しだす。逆に、空色分子をSPEに吸着させてピンク色分子を流しだす。自由自在に分子をハンドリングできるSPEの楽しい科学を、分子構造・分離の原理まで立ち返って、子どもから高校生・大人まで楽しく学んでもらいました。

 オープンキャンパスに合わせた本イベントを記念して、結晶すぽんじさんのぬいぐるみも販売開始!1年前に販売開始したクリアファイルにつづき、結晶すぽんじさん仲間が増えました!最先端の「超分子化学」の成果をわかりやすく伝える結晶すぽんじさん、イベントの参加者の皆様にも興味をもってもらえて、お買い上げいただきました。大切にしてあげてください〜

生協第二購買部の副島 佳奈 店長さん(右奥)と、松崎 有紀さん(左奥)。研究室グッズの生協販売は東大の150年の歴史の中で初めてで大変でしたが、生協さんは東大のサイエンスを盛り上げるために!って言ってくれて、とても一生懸命にご協力いただきました。

 統合分子構造解析講座がてがける、分子の構造解析の新手法「結晶スポンジ法」。今回は実体顕微鏡と結晶スポンジ材料の実物を展示して参加者の皆様に結晶の世界を覗いてもらいました。色のついた分子を取り込むと、無色だった結晶スポンジ全体が分子の色に染まります。この試料をX線回折測定すると分子の立体構造がわかるんです!

 本イベントでは、結晶スポンジ法の極意を極めた(?)花王の研究員の大澤さんにご協力いただき、企業の立場から、分子のカタチを調べる価値について、参加者の皆様にわかりやすくご説明いただきました!化粧品をはじめとする、身の回りの製品にも、たくさんの分子が活躍しています。参加者の皆様とお話させてもらい、分子を科学することの大切さ、明るい未来をめざして科学にかける企業の想いを感じとってもらえました。

右下の実体顕微鏡で、本物の結晶スポンジを見てもらいました。無色の「空」の結晶スポンジと、黒く色づいた「分子を取り込んだ」結晶スポンジを比較して観察してもらいました。
化学のユニフォーム「白衣」で記念撮影。三井不動産の中野 達彦さん(左)と花王の大澤 一弘さん(真ん中)。

 統合分子構造解析講座の拠点「FS CREATION」は柏の葉スマートシティにあります。三井不動産はこの街を“「世界の未来像」をつくる街。”にしようとめざしていて、本講座も街のプレーヤーのひとつとして産学連携による研究をとおして、新しい学術研究とともに、新しい産業の創出をめざしています。今回のサイエンスイベントでは、三井不動産の社員の方から、柏の葉での街づくりの取り組みを紹介いただきました。公・民・学が連携した先進的な街と、そこで活動する本講座の研究活動をお立ち寄りいただいた皆様に感じていただけたと思います!
・柏の葉スマートシティ 【FS CREATION 佐藤 宗太特任教授インタビュー】
・柏の葉スマートシティ 【FS CREATION 参加企業インタビュー】

三井不動産の中野 達彦さん(真ん中)と髙山 幸太郎さん(右)に、柏の葉スマートシティのご説明をしていただきました。

 分子のカタチを調べる「統合分子構造解析講座」。
 分子っておもしろい!
 その喜びを、子どもから高校生、大人まで伝えたくて「VR-MD」システムを用意しました。レンズをとおしてスマホを覗くと、身近な分子たちが立体的に見えるんです。今回は、裸眼でも立体的に見える空間再現ディスプレイも特別にご用意しました。どちらのシステムでも、VRなので、自分の手で分子に澤れるんです。MDなんで、分子がリアルタイムに動くんです。水やDNA塩基対、最先端のカーボンナノ超分子、お手軽に楽しく学んでもらいました!
 どう見えるんでしょう?文章では書き表せないので、ぜひぜひ機会がありましたら体験してみてください〜

子どもたちも
オープンキャンパスに来てくれた高校生も
東大で研究する大学院生・学部生も

 以上、2日間のもりだくさんのサイエンスイベントのレポートでした。少しでも分子を科学する楽しさを感じてもらい、本講座に関連したとりくみ、「結晶すぽんじさん」に興味をもってもらえたらいいな、と、企画メンバー一同の想いで開催いたしました\(^o^)/

メンバー
メンバー